ダイカ、伊藤伊、サンビックの3社か合同で2002年に設立。その後、他企業との合併を繰り返し規模を拡大させている ダイカ、伊藤伊、サンビックの3社か合同で2002年に設立。その後、他企業との合併を繰り返し規模を拡大させている

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
日用品の卸売り
(あらた)

卸売りは、インフレになると儲かる手堅い投資先だ。前回は食品の卸売りを取り上げたが、ほかのジャンルは? 先進的な取り組みを続ける日用品の卸売り最大手にフォーカス!

助手 前回は食品インフレが追い風になる企業を探して、大手食品卸の三菱食品にたどり着きました。

坂本 卸売業は小売りへの卸売金額に一定の料率をかけて利益を受け取るからインフレで儲かるんですよ。メーカーの値上げで1ケース当たりの単価が上がれば、単価に対する利益の絶対額も増えるわけだから。

助手 それで考えたんですが、今インフレになっているのは食品だけじゃないですよね。食品以外の卸売りにも所長の注目企業があるんでは?

坂本 それなら、「あらた」という企業が面白い。化粧品やトイレタリー、ペット用品といった日用品の卸売業です。取引先はドラッグストアやホームセンター、スーパーなんかだね。

助手 同社に注目した理由って?

坂本 幅広い商品を多様な業態の小売りに卸している点に注目したんですよ。三菱食品もそうだったけど、これからの卸売業は規模が大きい企業ほど有利になるから。まず、物流業界の残業規制「2024年問題」でメーカーが自前の物流網構築を諦めて外部に任せる流れが加速するはず。そのとき、全国展開する大手卸売業は、物流網の点でも商品管理の点でも有利になると思います。

助手 そうでしたね。あらたの規模って、そんなに大きいんですか?

坂本 実はかなりの規模です。東京証券取引所に上場する約3900社のうち、売上高ランキング200位にコンスタントに入ってくるからね。

助手 えっ! そうだったんだ。知られざる大企業って感じですね。

坂本 卸売業は地味だから。加えて、しばらく前まで「単なる中間流通でしょ」みたいなとらえ方で成長性を疑問視されることもあった。だから株価も割安に放置されてきました。

助手 あらたもPERは10倍。株価は上昇基調ですがまだ割安ですね。

坂本 そう。一方で、最近は大規模な卸売企業に新たな成長のチャンスが巡ってきた。つまり、成長株へ割安に投資するチャンスともいえる。

助手 2024年問題以外にも成長のきっかけがあるんですか?

坂本 ええ。卸売業は小売店への出荷データを持ってるでしょ。特に、あらたのような大規模な卸売りは、取扱商品の幅広さと全国展開に裏打ちされた精度の高いデータを持っています。これが成長のカギですよ。

助手 具体的にどんな取り組みを?

坂本 小売店の棚割り、つまり売り場のプロデュースを手がけています。店の売り場面積は限られている一方、多くの商品を扱っているから、売れる商品を選別していかに売り上げ効率を上げるかが重要。あらたは出荷データで売れ筋を見極めつつ、商品の重さや大きさのデータまで生かして、最適な棚割りを提案しているんです。

助手 そこまでやってくれるなら、同社を使おうっていう気になります。

坂本 そのとおりです。そうやって、ひとつの店の中に、あらたが押さえている棚を増やす。そして自社の「専売品」「優先流通品」も置いてもらい、利益率アップを図る。

助手 なんですか、それ?

坂本 プライベートブランドだね。売れ筋商品の情報や小売店・消費者のニーズを押さえている強みを生かして独自商品を展開してるんです。

助手 取引先メーカーに怒られそう。

坂本 そこは大丈夫。あくまで大手メーカーが手がけないニッチな商品を、短期間販売するだけだからね。

助手 面白い! 投資しても?

坂本 ええ。株主還元の意識が高いから、安心して投資できるでしょう。

今週の実験結果 
大規模かつ高精度の出荷データは今後の武器になります

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